久留米市中心市街地再開発事業の検証
 

中心市街地活性化にむけた市のとりくみ

 2020年2月9日(日)くるめ革新懇は、久留米市都市建設部まちなか整備課から2氏を招いて、「中心市街地活性化に向けた久留米市のとりくみ」と題する出前講座を市役所305号室にて開催しました。

 まちづくりや建築の元教授ら専門家を含む10名の参加があり、市職員から中心市街地の課題と再整備の必要性が述べられ、これまで市がリーダーシップをとって行ってきた中心市街地再開発事業7つ(内1つは現在進行中)についてのプレゼン後活発な質疑応答が交わされました。

 久留米市の中心市街地とは「中心市街地活性化計画」においてJR久留米駅と西鉄久留米駅の2つの交通拠点を結ぶ骨格的な都市軸に沿った約153haの区域を言います。(下図)

中心市街地の現状と課題

 「H2(1990)以降周辺市町村へ相次いで出店が相次ぎ、福岡天神・博多地区の商業集積強化が進み、H15(2003)に大型郊外型ショッピングセンター「ゆめタウン」が合川にオープンしました。

 一方、H17(2005)にダイエー六ツ門店の閉店、H21(2009)には久留米井筒屋の閉店などがあり、中心商業地域の広域商圏内での磁力性が弱体化しました。」(市の資料)


中心市街地再整備の必要性

 「現在、我が国が直面している本格的な人口減少と超高齢社会の進展の下、持続的発展が可能な都市づくりのためには、これまでの拡張型の市街地形成からコンパクトな市街地形成への転換を推し進めて行く必要があります

 そのためには、都市基盤の適切な更新を行うとともに、様々な都市機能の集積を進めるなど中心市街地の再整備に取り組み、

 ○ 商業・業務、文化・交流等の多様な都市機能が集積した魅力ある拠点の形成

 ○ 多世代が暮らしやすい安全・安心で快適な市街地環境の整備・改善

 ○ 核となる都市施設や良好な都市型住宅等の整備による賑わいと憩いの創出

を推進する必要があります。」(市の資料)

優良建築物等整備事業

 第2次世界大戦の戦後間もない時期に建設された木造家屋が密集する新世界・銀座地区の整備事業で15〜19階建てのマンション3棟に生まれ変わりました。

西鉄久留米東口再開発事業

 1970年代を挟んで14年間をかけて西鉄東口一帯を再開発し、再開発ビル2棟(東館:岩田屋新館と千歳プラザビル西館:リベール)及び東口ロータリーを建設しました。

 しかし、当初のもくろみとはかけ離れ、割高なテナント料で大幅な歳入減により、西鉄久留米駅東口の商業ビル「リベール」と「岩田屋新館」を管理運営などする第三セクター「久留米都市開発ビル」(同市天神町)は市への債務が約21億円残るなど経営難に陥っています。加えて、2019年3月21日に岩田屋新館の閉店が状況の悪化を加速しています。

シティプラザ整備事業

 2009年久留米井筒屋閉店の翌年2010年、旧市民会館の老朽化を理由にその跡地利用をもくろみ、久留米市は「久留米市総合都市プラザ検討委員会」を立ち上げました。ほぼ同時に間髪入れず第三セクターが約7億円で買収。2011年1月「市民会館取り壊し、都市プラザ新設」とする検討委員会報告書を提示し、2月14日に記者発表、合併特例債を活用する総事業費約125億円(実際の総事業費は約216億円に膨らんだ)とする超スピードの計画決定、即実施という前時代的・非民主的な経緯で建設が強行されました。(くるめ革新懇編集「市民がつくる久留米市政白書 こげんでよかとの」無料
可)

 2016年に完成後、駐車場が少なく料金が高い、各会場との連携が複雑、使い勝手が悪いうえ、毎年約7億円もの赤字を計上しています。くるめ革新懇は検証作業に入り、その結果を公表する予定です。

 

JR駅前再開発事業

 新幹線駅の開業に伴い、駅前の土地の高度利用、老朽化建築物の更新、防災・市街地環境改善を名目に、民間が主導する一部店舗を含む第一街区35階と第二街区36階建て高層マンション建設に、公費負担が約14億円と約44億円で、久留米市はそれぞれ約7億円と約22億円も補助する市街地再開発事業で、第二街区は現在進行中です。

 巨額な投資の割に久留米市は一部も所有することはなく、将来得る見返りは、住民の増加による増収と固定資産税歳入を得ることだそうです。それも久留米市内からの転入が半数を占め、福岡都市圏へ通勤・買い物するだけの就寝拠点になっていないか、ならないか、など疑問符が多く、活性化とは名ばかりの特定の地主とデベロッパーへの税金供与ではないかと疑わしいことばかりです。

出前講座「中心市街地活性化に向けた市街地再整備等の取り組み」から

久留米の市街地像を考える

河野泰治(元福岡大学工学部建築工学教授)

1.久留米市中心市街地の現状・課題から活性化基本計画の取り組み(自転車路整備、坂本繁二郎生家保存、六ツ門大学など)、とりわけ7つの再開発事業概要の丁寧な説明を受けた。(都市建設部まちなか整備課 岡崎剛さん 浜崎祐治さん)

久留米市の中心市街地活性化事業には、多様な施設建設の緊急性はないことから、再開発事業として、シティプラザ以外は「住宅」・マンション建設がメインとなる。JR駅前には30階を超える2棟のタワーマンションを施工中。これら6つのマンション開発事業への市の補助金は約40億円。

2.2014年の改正都市計画法の運用について、国土交通省 都市・地域整備局は「民間事業者のイニシャティブを認め、まちづくりの推進に関する民間の経験と知識をより積極的に取り込むことが重要」とのコメントをつけている。その実施例であろう。

3.「新世界」「銀座」地区。高層マンションが建設されたが。老朽木造家屋密集地の改良に対しては、自治体主体の低・中層の公営集合住宅建設など、自治体と住民との共働による柔らかな街の改良事業である「街なみ環境整備事業」や「住宅地区改良事業」などの適用が検討されて良いのではと考える。

4.久留米駅周辺のタワーマンションの林立は、活性化基本計画の4つの数値目標(中心市街地域の歩行者通行量、交流施設の利用人数、空き店舗率)の一つである、中心市街地域の居住人口の増加にはつながる。しかしここでの居住人口増は、「久留米駅周辺高密居住地」を形成し、①「通勤結節点」「就寝拠点」として②「福岡都心との拠点連携軸」を強化する契機となりはしないだろうか。久留米市(中心市街地)の「活性化」とは逆方向の「空洞化」、福岡のベッドタウン化に繋がっていきはしないだろうか? 通勤するため・寝るだけ、日中の活動は福岡。家計の収入も支出も久留米市には頼らない。商店も不要に近い、コンビニで間に合う。シティプラザに出向くこともない。

5.活性化事業が、静かな中心街、「サイレント・久留米」を生み出すことにならないか、危惧される。

 沈黙を破るのは、市街地に溢れる黄色い声であろう。室内に閉じ込められた学童施設ではなくて、のびのびと友達と連れ立って遊びまわる外の空間は子供の成長にとってとても大切だ。市街地もその一つであろう。久留米の天然の条件に不満はない。出産から育児・保育・子育て、育ち上がりの環境整備が、久留米市(中心市街地)の活性化に不足しているのではないか。人口減は確定した法則でも何でもない。単なる為政者の愚策の結果に過ぎない、ということを国際社会が教えてくれている。

・なお、多数建設されたマンションとりわけタワーマンションでは、築20年以内の大規模改修に備えて、入居者による、維持管理のシステムをしっかり構築しておくことが不可欠になる。

市街地再開発という名の高層マンション建設補助、シティプラザ活用私案

浦川豊彦(元ロンドン大学研究員、フードバンクくるめ代表)

 税金の使い方の公平性に問題がある。そもそも、住民が幸福に暮らして行くことが目標であって、コンパクトシティの名の元に都市部の高層マンションに大勢が住むことが「幸福」なのだろうか?

 中心市街地の高層マンションを購入もしくは賃貸で借りることのできる住民は上位の所得の高い層であって、一般庶民ではない。歴代の自民党政権が生み出した格差と貧困が大きな社会問題となるなか、税の使い途が所得の再配分の機能を果たすには、低家賃、高品質の新規の市営住宅であって中心市街地の高層マンションではない。日本には憲法25条の実現をめざす公共住宅の概念がなく、民間任せである。

 2019年9月の北海道胆振地震は、従来あり得ないと考えられてきた数日間以上にわたる全道のブラックアウトであり、高層マンションの災害に対する脆弱性を暴露した。現在も原発に依存する九州電力管内であり得ないことと誰が否定できるであろうか。住民の過度の集積は大規模災害に脆弱である。現在進行中の新型コロナウイルスCOVID-19肺炎でも高層住宅で暮らすことはリスクファクターと成り得る。

 私個人は、庭いじりのできる郊外の方がずっと幸福に暮らし、子育てができた。買い物も、ネット、食材の宅配、移動販売車、地域の商店や直売所など、まったくの買い物難民になることはない。私見ながら、生活習慣病で頻繁に病院に通い薬漬けになるより、運動・栄養・心のやすらぎ・地域社会参加などに時間を充てた方がよほど健康で長生きできると思う。不要な医療を受けないことで、健康保険の健全化にも寄与できる。

 もう建設されてしまったので今更壊せとは言えないシティプラザであるが、金食い虫の大型倉庫になりつつある現状を打開するには、長門石にある社会福祉協議会をシティプラザ内に移転させ、多くの市民、ボランティアの集う賑わいのある施設に変革させることを合わせて提案したい。

久留米市の補助金額: 10.5億円

   新世界(第1期工区)3.2億円

   新世界(第2 期工区)3.2億円

   銀座地区 4.1億円

久留米市の負担金額: 377億円

   西鉄東口 161.3億円

   シティプラザ 176億円

久留米市の補助金額: 29.1億円

   JR久留米駅前第一街区 7億円

   JR久留米駅前第二街区 22.1億円